ゆうき耳鼻科院長のBlog

大阪府 茨木市でH23年1月に新規開業しました。 耳鼻科の診療機器の開発や、滲出性中耳炎や耳管開放症については専門的治療を行っています。

滲出性中耳炎

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当地で開院してまだ2日しかたっていませんが、子供さんの滲出性中耳炎が意外に多い印象を受けます。
滲出性中耳炎は5歳以下の子供さんに多いですが、5歳以上の患者さんが立て続けに来られました。

ほとんどの方は年齢と共に自然に治ることの多いこの病気ですが、10歳をこえると、大人になっても中耳炎を繰り返したり、癒着性中耳炎や真珠腫になるケースもありますので、ちょっと驚きです。

私が以前勤めていた摂津市でも、小学校の学校検診を回りますと、小学1年生で、1校あたり当初(6年前)は10人前後滲出性中耳炎のお子さんがおられました。

摂津市では、幼稚園や保育所でも耳鼻科検診がありましたので、滲出性中耳炎治療に力を入れましたところ、5年後には私が回った小学校(味舌小、別府小、味生小)の3校合わせて滲出性中耳炎の生徒が2人だけ(1年生だけで)になりました。

小学校の耳鼻科検診も大切ですが、耳のことを考えれば、幼稚園や保育園児の段階でなんとかしなければ手遅れになってしまいます。

今後の動向を見つつ、茨木市でも保育園や幼稚園の耳鼻科検診に力を入れていかねばなと思います。
滲出性中耳炎は実に奥が深い病気です。
「水がたまる病気なんだったら、水を抜いたら終いじゃないの」
と思われるかもしれませんが、たいていの場合は鼓膜切開などして水を抜いてもすぐ再発しますので、鼓膜切開にあまり意味はないといわれています。

地道に鼻の奥と中耳の炎症をとる治療(薬や鼻の処置)をすることが必要で、それでも治らなければ(6ヶ月くらい様子を見て)、鼓膜換気チューブをいれるのが一般的な治療方法です。

なぜ子供の滲出性中耳炎で治り安い人と治りにくい人がいるのでしょうか。
一般的には、耳管(鼻の奥と中耳をつなぐ管)の通りが悪いからだといわれることが多いのですが、それはおかしいと私は考えています。
なぜなら、子供の方が大人より耳管は通りやすく、閉まりが悪いからです。
開きっぱなしで閉まりが悪いから、鼻の奥の炎症が耳に逆流して、中耳炎が長引くわけです。

それは、大人の耳管開放症という病気についても同じで、この病気だと耳管は開きっぱなしなのに、滲出性中耳炎や、癒着性中耳炎、真珠腫になったりします。この病気は深刻です。

私が今興味をもっているのは、大人の耳管開放症の原因です。
子供の頃の滲出性中耳炎が、ちゃんと治療されなかったから大人になって耳管開放→癒着性中耳炎、真珠腫になるのか、生まれ持った体質でそうなるのかです。

もし生まれ持った体質で耳管開放症、癒着性中耳炎、真珠腫になっていくのなら、子供さんの滲出性中耳炎を目くじらたてて治療することの意味はあまりありませんが、そうでないのなら、子供の滲出性中耳炎はきっちり早期に治療するべきです。

今までの経験から言えば、大人の重症の耳管開放症は、幼少期の滲出性中耳炎がベースにあると考えいます。

この結論を出すには長期間の観察が必要ですが、何とか私が死ぬまでにはこの結論は出したいと思っていますので、よろしくお願いいたします。


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