ゆうき耳鼻科院長のBlog

大阪府 茨木市でH23年1月に新規開業しました。 耳鼻科の診療機器の開発や、滲出性中耳炎や耳管開放症については専門的治療を行っています。

インフルエンザ対策に必要なものは?

age.JPGインフルエンザの流行期もピークに達しているようで、当院でもインフルエンザの患者さんが多数受診され、この3週間だけでも30人以上になっています。年齢は右のグラフのように子供が中心ですが、その親世代も多くなっているようです。
そして、毎年のことながら近隣の学校では学級・学年閉鎖も増えています。

さて、先日同世代の知人と会話をしていたのですが、
「昔はそんな学級閉鎖なんて滅多になかったよなぁ。医療は進歩してるのになんで?」
と聞かれました。

ごもっともな話で、幸か不幸か、私(45歳)も記憶にある限り学級閉鎖は小中高と全く経験がありません。
それに、インフルエンザの治療は、迅速検査キットの実用化(2000年)、タミフル等抗ノイラミニターゼ薬開発(2001年)等、この20年でとても進歩していますが、何故なんでしょうか。

そこで、国立感染症研究所がこちら(https://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-flulike.html)で公開している年度別学級閉鎖情報をグラフにして、原因を考えていきたいと思います。

flu.JPG公開されているデータが1997年以降なので、それ以前の状況がわからないのが難点ですが、このグラフからわかることとしては、

  1. 検査キット、タミフル発売開始の2000年以降、学級閉鎖数は増加傾向
  2. 2009年は新型インフルエンザのパンデミックなので仕方ないが、ここ5年でも増加傾向

といったところでしょうか。確かに昔より学級閉鎖の頻度は増えています。抗インフルエンザ薬や迅速検査など、医療技術の進歩はあまり役に立っていなさそうです。
強いて言えば、
「感染しても薬のおかげでインフルエンザなんて怖くない病気だよ」
などと言えればいいのですが、残念ながら皆この病気に戦戦恐恐としているのが現状ではないでしょうか。現に37.5度くらいの熱でも心配だから検査をしてくれ、という方がほぼ毎日おられます。(以前にも書きましたが、明らかに軽症で抗インフルエンザ薬を使う必要がないと判断される場合は、当院では迅速検査を行っておりません) そのため、軽症でもインフルエンザと診断されてしまい、休む人が多くなるのも学級閉鎖数増加の一つの原因かと思います。
迅速検査、抗ウイルス薬には当然お金がかかります。2000年以前はなかった金額が、皆さんが払っておられる健康保険料から消費されてこの現状なのですから、何らかの対策をとらないと、それこそどこかの知事が問題にしている案件より遙かにコストパフォーマンスが悪いですよね。

それと、もう一つ、グラフでは少し切れてしまっているのですが、1997年も2009年のパンデミックほどではありませんが、小さなピークになっています。journal.pone.0026282.g002.png
これについてはいろんな研究があるのですが、こちらの論文にある右の図表が有名で、1994年に学童のインフルエンザワクチン集団接種を止めた影響が大きいのでは、との説が有力です。
少し難しいですが、日本ではワクチン止めたら冬場に死亡する人が増えたけど、アメリカではそういう傾向がなかった(世界的なインフルエンザ流行はなかった)ので、集団接種が有効だったと言うことです。

当院でも今月診断されたインフルエンザ患者さんについて、ワクチン接種の有無を調べたところ、右の表のような結果でした(A型、B型の種別とワクチン接種歴の人数)。
もちろん、統計的にはインフルエンザにかかっていない人のワクチン接種率がわからないと統計的判断はできませんが、印象としては圧倒的にワクチン未接種の人の罹患率が高いです。
table.JPG

ワクチンをうってもかかることはもちろんありますが、かかる率は下がります。未接種の人が多いと、その集団の間でウイルスが蔓延してしまうので、接種した人たちもとばっちりを食うような感じな訳です。

というわけで、今後インフルエンザ感染を増やさないためにはワクチン接種です!
今シーズンのワクチンは当院ではなくなってしまいましたが、来シーズンからは是非、インフルエンザワクチン接種をうけて、子供たちの世代が不利益を被らないように皆で出来ることをしていきましょう。
それと必要以上にインフルエンザを恐れすぎないことです。決してタミフル等抗インフルエンザ薬がないと治らない病気でないし、いざとなればいい薬があるわけですから、かかってしまった場合もゆっくり体も心も休めましょう。

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