ゆうき耳鼻科院長のBlog

大阪府 茨木市でH23年1月に新規開業しました。 耳鼻科の診療機器の開発や、滲出性中耳炎や耳管開放症については専門的治療を行っています。

インフルエンザには気をつけつつ、恐れすぎず

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少し落ち着いてきた感はありますが、まだまだインフルエンザの方は多く、当院でも1日20人程度は検査陽性になる方がおられます。
ただ、必要以上に恐れておられる方も多く、まずは冷静になって欲しいと思います。
いくつか個人的に気になっていることを。

1. インフルエンザは抗インフルエンザウイルス薬(タミフル、リレンザ、イナビルなど)なしでは治らない病気ではない

2. 抗インフルエンザウイルス薬は、半日程度発熱期間が短くなるくらいの限定的な効果しかない

3. 全身状態がよく熱も軽度であれば、たとえインフルエンザであっても抗インフルエンザ薬は必要ないので、そういう人には迅速検査も行わず、通常の風邪に対する対症療法薬の処方で様子を見ることもあります。

4. ただし肺炎(呼吸困難/子供では呼吸回数増加)や脳症(意識障害や反復する嘔吐など)が疑われれば早めの受診を

5. 一度病院を受診した後、症状改善がないとか、前回迅速検査で陰性であったが熱が下がらない等で再度病院を受診されるときは、別の病院を受診されるのではなく、出来ればはじめに受診された病院の受診を

6. ハイリスクの人以外には、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与は認められていない(保険外でも)ので、予防のために抗インフルエンザウイルス薬を下さいと前記以外の方が来られても処方は出来ません

1.2.3.については、ハイリスク(心臓病、呼吸器疾患(ひどい気管支喘息など)、糖尿病、先天代謝異常症、免疫不全、腎臓病といった病気を持っている方や高齢者、妊娠28週以降の妊婦)でなければ、ほぼ寝ていれば治る病気です。抗インフルエンザ薬にも副作用やインフルエンザに対する免疫獲得を妨げる、耐性ウイルスを誘導するなどの懸念があることも有り、病院を受診してインフルエンザといわれても、全身状態がよければ抗ウイルス薬を処方されない場合もあります。

ただ、4のような症状がある場合は、半日待ったりせずに受診するようにしてください。

5.も非常によく見られることです。 今日も、
「昨日38度の発熱があって内科でインフルエンザ迅速検査を受けたが陰性だった。今日も39度あるのでもう一度検査して下さい」
と来られた方がおられました。
何度も同じ病院を受診しにくい気持ちはわかりますが、医者もプロですから初診時の顔色や息づかい、所見からいろんな病気の可能性を考え、もし改善なければ次はこうしようと作戦を練っているものです。別の病院を受診されると、初診時の貴重な所見が取れないのと同時に、また一から作戦練り直しになるので、次の検査を行うのがワンステップおくれてしまい、場合によっては命に関わることもあります。今日受診された方は結果的にインフルエンザ陽性で、結果がわかりある意味よかったものの、インフルエンザだけが重篤な病気ではありません。

6.も何人か相談に来られました。家族がインフルエンザだが仕事が休めない、受験生がいる、など気持ちはわかるのですがハイリスクの方以外は処方できません。

検査の必要もない人に迅速検査を施行したり、検査陽性者全員に抗インフルエンザ薬を処方するような医療を続けていると、いずれ保険医療が破綻する恐れや、耐性ウイルスの蔓延など、将来の世代につけを回してしまうことになりかねません。
必要以上に恐れることなく、冷静に対応しましょう。

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