ゆうき耳鼻科院長のBlog

大阪府 茨木市でH23年1月に新規開業しました。 耳鼻科の診療機器の開発や、滲出性中耳炎や耳管開放症については専門的治療を行っています。

中耳炎に鼓膜切開は必要か?(子どもの場合)

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「中耳炎で鼓膜を切って膿を出さないといけないといわれたんですけど、本当に切らないと治らないんでしょうか」

と意見を求めて受診される方がよくおられます。

結論から言いますと、私の意見としては、子供の中耳炎で鼓膜切開を要するものはきわめて少ない、という立場です。

もっとも、中には鼓膜切開を要するケースもありますが、子供の中耳炎に限っては、年間で鼓膜切開をするのは1人いるかいないかです。

 

小児の場合、鼓膜切開を検討すべき中耳炎は大きく分けて2種類あります。1つは鼓膜の奥に膿がたまって腫れて痛くなる「急性中耳炎」、もう一つは、鼓膜の奥に水がたまって、痛くはないけど聞こえにくい「滲出性中耳炎」です。

 それぞれの場合について考えてみましょう。

  1. 急性中耳炎の場合
    急性中耳炎は、鼓膜の奥、中耳という空洞で細菌やウイルス感染から炎症が起こり、腫れたり膿がたまって痛みを伴います。
    その細菌やウイルスは、鼻の奥から、耳管という耳と鼻の奥をつなぐ管を逆流して感染します。
    子どもの場合は、この耳管の長さが大人に比べて短く、通りやすい(開放している)ので、大人よりよく中耳炎になります。

    図1.png急性中耳炎に子どもさんは、多くの場合、救急や病院に受診した頃には痛みがましになっているものです。これは、炎症が起こって急激に腫れてくるときは激しい痛みが起こりますが、ピークが過ぎて鼓膜の腫れがしぼんでくると急に痛みから解放されるからです。
    中耳炎の痛みのピークは、2-3時間といったところです。おそらくこれは、先に書きましたが、子どもでは耳管が短く通りやすいので、感染も起こしやすいけどたまった膿も出て行きやすいということでしょう。

    したがって、痛みがひどいから急いで鼓膜切開をしましょうというのはあまりおすすめできません。まずは痛み止め等で様子を見るべきだと考えます。

    それと、中耳炎の膿が耳管を通って鼻の奥に抜けていくには、鼻の奥の炎症を鎮めてやる必要があります。したがって、中耳炎を早く治すには、耳に薬を入れたり鼓膜切開したりするよりも、鼻の治療を優先すべきです。

    ただし、中耳にたまった膿が耳管から出ていかずにどんどん増えていくような場合は注意が必要です。髄膜炎や内耳障害になると中耳炎が治っても後遺症を残してしまいます。これらの徴候がないかを見分けるのが難しいですが、抗生剤などを内服しても熱が下がらないとか、鼓膜の腫れがひかないなどの所見があれば疑います。

  2. 当院では、
      1. 鼻汁の症状によって、抗生剤や鎮痛剤の内服で様子を見る
      2. 翌日になっても中耳炎が原因と思われる熱が下がらない場合、鼓膜切開を考える

    というステップで診療しています。
    この方針で診療してきて、5年くらいの間に急性中耳炎で鼓膜切開を要したのは、2,3人だけです。


  3. 滲出性中耳炎の場合
    滲出性中耳炎は、中耳に液体がたまって、聞こえにくくなる状態です。腫れはありませんので、痛みは通常ありません。治療期間が長くなるのと、医者によって方針も違いが多いので、こちらのケースで質問を受けることがほとんどです。

    滲出性中耳炎の場合、鼓膜を切って水を抜いても、たいていの場合は穴がふさがってしばらくするとまたたまります。
    海外の研究でも滲出性中耳炎に対する鼓膜切開は意味がないといわれています。

    滲出性中耳炎で中耳に水がたまっている状態は、病気の中の氷山の一角の所見で、水がたまる原因として、中耳の粘膜に炎症があったり、耳管の機能が悪かったり、鼻の奥に炎症がありこれが中耳に波及しているなど病気の「根」の部分を治さない限り必ず再発します。
    従って、一時的に鼓膜を切ったりレーザーで穴を開けて水を抜いても、草の葉っぱだけを切っているのと同じで必ず再発します。

    当院では、こちらのように、
      1. 鼻を中心にした治療を3ヶ月くらい続けて様子を見る(草の根の部分)
      2. それでも改善しないときは、チューブを入れる手術を検討する
    という風にしています。

     

いずれの場合でも、子どもの中耳炎で鼓膜切開をすることは少なくなりました。
昔は中耳炎といえば、「鼓膜切開をして、耳にガーゼを詰めて毎日ガーゼ交換に通う」といった治療を行っているところもありましたが、今ではほとんど行いません。

逆に、鼓膜切開が必要な場合というのはよほどの事情がある場合ですので、十分に主治医の説明を聞いてその必要性を理解することが大切です。

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