ゆうき耳鼻科院長のBlog

大阪府 茨木市でH23年1月に新規開業しました。 耳鼻科の診療機器の開発や、滲出性中耳炎や耳管開放症については専門的治療を行っています。

グラム染色

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新年あけましておめでとうございます。
年末年始は休診させていただきまして、ご迷惑おかけいたしました。平成27年は1月5日(月)から通常通り診療を開始しています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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さて、当院では昨年末から顕微鏡を導入いたしまして、細菌検査や組織検査、細胞診に役立てています。
個人医院では通常これらの検査は外部の検査機関に委託するのが一般的で、当院でもそうしているのですが、検査会社から帰ってくる文書だけではなかなかイメージもわきにくく、病態もつかみづらいものです。実際に顕微鏡を使って検体を眺めてみるといろんな発見があって驚きます。

右の写真はグラム染色という細菌を色分けしてわかりやすくする染色方法で撮影した写真です(400倍)。紫色の小さな点々が細菌で、赤っぽい大きな丸いのが白血球です。
2歳児の鼻汁なのですが、何ヶ月も続くとのことで検査してみると、このように無数の菌がおり、1000倍で詳しく観察すると、紫色(グラム陽性菌)で2つがくっついた形(双球菌)をしており、ワクチンでおなじみの肺炎球菌であることがわかります。011.jpg

もちろん、このような検査結果は検査会社からの報告でもわかるのですが、このすさまじい菌の量を見れば抗生物質を使った方がよいことは一目瞭然であります。

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次の写真も、前例と同じく2歳時の鼻汁です。こちらも見た目は先ほどの子どもと同じような感じなのですが、様相が大分違うことがわかるでしょうか。

全体的に菌の量は少なく、丸くて2つがくっついた形の菌は赤っぽく染色されています。で、画面右の方には細長い赤っぽい別の菌も写っています。
赤い菌は「グラム陰性菌」といいまして、丸いのがカタラーリス菌、細長いのがHibワクチンでおなじみのインフルエンザ菌(髄膜炎の原因になるのとタイプが微妙に違うといわれています)です。

両方とも薬が効きにくく、治療に時間がかかるしつこい菌です。こういう菌に効く抗生剤もあるのですが、3歳未満ではあまり強い薬を使いすぎると体を守る善玉の菌も死滅することがある(菌交代現象)ので、こういう症例では熱などがない限りなるべく抗生剤は使わず様子を見るようにしています。

001.jpg左の写真は、先の2例と同じくすごくネバネバの鼻汁が続く1歳児の写真ですが、真ん中に白血球が写っていますが、細菌は全くいないことがわかります。
実は他院で長期間抗生剤をもらっていたけど治らないとのことで受診されたのですが、菌は確かに全くいないので、これではいくら抗生剤を飲んでも治るわけはありません。
これは副鼻腔炎という状態(正確には1歳では副鼻腔は未発達なので慢性鼻炎)なのですが、かぜなどの感染後、粘液を分泌する細胞が増えてしまった状態で、治療には時間がかかりますが、抗生物質は飲まずにこまめに鼻処置をくりかえしていけば徐々に改善します。

グラム染色は古典的な方法ですが、百聞は一見にしかずといいますか、感染症治療には非常に有効です。
これからも的確で無駄のない治療を続けていきたいと思っております。

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